3月2014

近現代の日本

きままな読書

このごろは、明治以降の歴史、社会学の本をまとめて読んでいます。その中からいくつか。

それでもIMG_220 最初は、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』です。この本は、東大の加藤陽子先生が歴史好きの中高校生に対しておこなった集中講義の内容をまとめられた本とのことです。日清戦争から太平洋戦争まで、いわゆる近現代における「日本人の選択」がテーマです。選択肢は複数在る中で”それを”選択した背景、出来事そして考え方が語られています。

 登場人物の大半は、これまで歴史の中で繰り返し語られて来た人達ですが意外な面も見えて認識を新たにすることがいくつもありました。それぞれの時点で、その「選択」を決定しあるいは中心となって推し進めた人たちですが、当然のことながら大きな流れの中での「選択」なわけです。ややもすると当時の置かれていた流れを見落として、その一場面を切り取って評価してしまいがちです。正しく歴史を解釈し将来における「歴史の誤用」を避けねばなりません。

 当然ですが、現在は、その時々の選択の集大成として在るわけですから、「何故、あの時」「どうしてこんなことを」と言いたくもなります。この本は、その疑問にも平易な言葉で分かり易く記載されています。おすすめの1冊です。

正体IMG_221 次に外交官であった孫崎享さんの『戦後史の正体』です。戦後70年を「米国からの圧力」という視点から読み解いています。これは、別の意味で大変考えさせられる内容を含んでいます。歴代政権が米国とどのように付き合おうとしたのか、その結果何が起き、今に至るまでどのような影響を与えているのかが概観できます。ここにも、意外な側面がたくさん出てきます。

終戦直後はいざ知らず、どの国でも外交は国の利益を基本としていることに改めて気づかさせてくれます。国の利益に直結しなければ簡単に「手のひらを返す」のが当たり前なことに心しておくべきでしょう。TPPに見られるような押しつけは、今に始まったのでないことが分かるし、受け入れ後も透けて見えてしまいます。心してより良い判断をしたいものです。

誰もIMG_222 最後は、売り出し中の若手社会学者、古市憲壽さんの『誰も戦争を教えてくれなかった』です。この本を書いたのは28歳です。若手知性が近現代、とりわけ戦後を如何にとらえているのかは大変興味を持つところです。この本で筆者は、パールハーバー、アウシュヴィッツ、中国、韓国そして沖縄へ「戦争」をどのように「記憶」しているか知るために訪ねています。
戦争の余韻もない中で育ってきた若者に「戦争」という「大きな記憶」を共有させようとしても無理がある。では、いかなる処方箋があるか? こちらも、大変興味あるテーマです。ご一読をお薦めします。

 10年ごとに戦争を繰り返してきた明治中期から昭和初期までと70年間戦争のない戦後。現在まで多くの出来事が歴史として語られています。しかしながら、歴史は時間とともに風化するのはやむを得ないでしょう。でも、せめて中途半端な歴史認識で過去を語るのは止めようと思う。