2月2015

遙か天を仰ぐ

きままな読書

キーンと冷気が張り詰めた深夜、遅い帰りに見上げた星の光が懐かしい。冬の澄み切った空には、明るい星が多く見応えがあります。ひときわ明るく輝くおおいぬ座のシリウス、誰でも知っているオリオン座の三つ星とその下に広がるオリオン大星雲、青白い星がかたまって見えるおうし座のプレアデス星団(「すばる」)などなどキラキラ輝く星々は、いつまで経っても見飽きることはありません。

久しぶりに宇宙ものです。『宇宙の謎』は、宇宙科学の現時点での到達点が分かり易くまとめてあります。本書を読むと、日常の細かなゴタゴタに煩わされるのが馬鹿馬鹿しくなり、すっ~と心が軽くなります。
Uni01_01曰く、この銀河には1000億個の恒星が含まれ、宇宙には1000億個の銀河がある。
太陽の数十倍の星は、核反応が尽きると一瞬(数万分の1秒らしい)にして重力崩壊を起こし外側を吹き飛ばす。これを超新星爆発と言い、その際の光は銀河全体の星を合わせたものより明るい。
天の川銀河の中心には、太陽の370万倍の質量を持つブラックホールがある。お隣のアンドロメダ銀河のブラックホールは、1億倍の質量を持つ。やがて宇宙の星々は、ブラックホールに飲み込まれ何も無くなる。そして、10の100乗年後には、ブラックホールも消える。
その後どうなる? 分かっていません。
などなど、スケールが違うなどといったことばでは全く足りない世界がある。
各項目5~6ページでまとめてあり、分かり易く書かれているので気楽に読めますが内容は濃いと思いました。

『宇宙は本当にひとつなのか』は、最新宇宙論の入門書として難しいことをやさしく説明してくれています。
Uni02_012003年を境に宇宙論がひっくり返ってしまったと「はじめに」に書かれています。その理由は、次の二つのようです。
太陽系は、太陽を中心として惑星が周回しています。その惑星の速度は、太陽から遠いほどゆっくりになります。言い換えれば、強い重力に引っ張られていると速い速度で動くことになります。銀河もその中央のブラックホールを中心として恒星群が回転しています。ところがこの場合、中心から離れていても速度が遅くなることが無く、外側の方が反って早い速度であることが分かってきました。これは、とても変てこりんなことで、銀河の中心部以外にも大量の物質が有り重力を及ぼしていなければ説明できないのでこの”大量の物質”を「ダーク・マター」と名付けています。意味は、”何か訳の分からん物質のようなもの”と言ったところでしょうか。

もう一つ、宇宙が膨張しているのはよく知られていますが、その膨張速度が、なんと、加速していることが最近分かってきました。宇宙が拡大すれば、体積が増える分エネルギー密度が減るので膨張速度が落ちるのが常識的に納得するところです。加速するには、加速のためのエネルギーが必要です。加速膨張するには、止めども無くどこかからかエネルギーが供給されなければなりません。  何処から?どうやって? これもよく分からないので「ダーク・エネルギー」と名付けられています。

これまで、宇宙は原子(≒物質)で出来ていると思われてきましたが、宇宙全体のエネルギー分布は、原子(元素)の持つエネルギー=4.4%、「ダーク・マター」=23%、残りは「ダーク・エネルギー」=73%となるらしい。つまり、96%はよく分からなく正体不明であることが最近分かってしまったことです。
この本では、重力波からニュートリノのような訳の分からん未知の素粒子まで、さらに多次元宇宙、多元宇宙などの宇宙像(=題名の「宇宙は本当にひとつなのか」)まで、知的好奇心を思い切り満たしてくれます。

薄明るい東京の空でも、少年の頃の記憶が補ってくれるので、十分に夜空を楽しめます。俗世間からしばし離れ、自由な世界で自分を解放してみませんか。

[ここの内容について。数値には、出所により違いがあります。また、記述には自分が誤解しているところもあると思います。]